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回転率は、専門用語では「売掛金回転期間」と呼び、「売り上げ何カ月分」の売掛金が月末に残っているのか、ということを教えてくれる。
この例でいうと、4月は売り上げ1・5カ月分の売掛金があるが、5月は売り上げ1・3カ月分と売掛金が少し減っている。
もちろん、売掛金は売り上げ代金の未回収分なので、できるだけ早く回収したほうがいい。
だから、月末にはあまり残っていないほうがいい。
さて、4月から9月の数字を見て、あなたは何月がいちばん問題だと思うだろうか?売掛金を見たときは5月、7月、8月の変動が目立っていたが、回転率を見ると8月だけが異常な数字になっていることがわかるだろう。
売掛金が売り上げ2カ月分と、他の月よりも多く残っているのである。
こうして会計士は、8月の帳簿を重点的に調べたり、8月になにが起こったのかを会社の経理担当者に聞いてみたりするのである。
そうすると、「8月に取引先のA社が潰れたんですよ」といったやむをえない事情が判明する場合もあれば、「営業担当者が回収したお金を横領していました」といった不正が判明することもあるのである(こうした不正の見つけ方については、拙著『女子大生会計士の事件簿』シリーズで毎回明らかにしているので、興味のある方はこのように、割り算を使うことで求められる回転率をはじめとした「率」には、真実をあぶり出してくれる力があるのである。
「木を見て森を推測する」のが監査の仕事つまり、われわれ会計士は、監査といってもすべての会計資料に目を通してチェックしているわけではない。
人数と時間の制約があるので、そんなことはよほど小さな会社でもない限り物理的に不可能なのである。
そこでどうするかというと、回転率を使ったりして調べる範囲をある程度せばめるという方法を取る。
すべてを調べるのではなく、重要そうな一部をサンプルとして取り上げてそれを調べる。
大事な一部分を調べることで、「まあ全体としても大丈夫だろう」と太鼓判を押すのが監査の仕事なのである。
「木を見て森を見ず」ならぬ、「木を見て森を推測する」といった感じだろうか。
監査用語では、これをリスクアプローチと呼んでいる。
リスク、つまり不正や粉飾がありそうなところに重点的に取り組むという方法論である。
リスクアプローチでポイントを絞るこの「リスクアプローチ」は、監査以外の場所でも使える。
というより、自然と使われている場合も多いだろう。
たとえば、スーパーで魚を選ぶときは、魚の全体をながめてもよくわからないので、目だけを見て、「瞳が濁っていないか、血走っていないか」という視点で新鮮かどうかを判断するだろう。
名画を見るときも、全体を見てもどこがすごいのかさっぱりわからないときは、まずその絵の一部分をじっくりと見ればいい。
ダ・ヴィンチの「モナリザ」なら、まず彼女の手の描かれ方に注目すると、「これは描けない!」というようにそのすばらしさの一端がわかるという。
私は4年間、高校生に大学受験対策として現代文を教えていた。
そのときにまず教えた攻略法は、「文章のなかから『過去』と『現在』、『自然』と『機械』といった対比されているふたつのものを見つけなさい」ということだった。
どんなに難解な文章でも、大学受験で出題されるようなものであれば、必ずなにかの対比を軸に語っているはずだからだ。
対比の軸さえ見つけてしまえば、文章が難解でなにをいっているのかよくわからなくても、問題を解く際にはなんとかなるのである。
また、英会話で知らない単語がたくさん出てきたとしても、その前後の知っている単語やその場の状況から推測すれば、なんとなくいわんとしていることが理解できることも多々あるだろう。
要は、全体的に見てもさっぱりわからないものは、ポイントを絞って見ていけばなんとなくわかってくるということである。
監査の場合は、事前に経営者からいろいろな話を聞いたり、会社の業務の流れを調べたりして、不正や粉飾につながりそうなポイントを洗い出しておく。
そして、いくつか挙げられたポイントを検討して、より重要なポイントに徐々に絞り込んでいってから、ようやく帳簿のチェックといった監査作業に取りかかるのである。
ポイントの絞り方はそうむずかしいものではない。
監査でいうならば、「金額的に大きいものはどれか?」「他への影響力が大きいものはどれか?」といった見方で絞っている。
つまり、「大きいもの」に絞ることがセオリーなのだ。
たとえば、パソコンを買うとするならば、「値段」「画面の大きさ」「CPUの速さ」「ハードディスクの容量」など、さまざまなポイントがあるが、自分にとっていちばん重要度が大きいものにポイントを絞るのがいい。
いま現在「お金がない」ということだったら、「値段」がいちばん大きなポイントになるだろうし、コンピュータ・グラフィックスにチャレンジしたいということであれば、「CPUの速さ」「ハードディスクの容量」などがポイントになるだろう。
また、初対面の人に会ったとき、あなたならいったいその人のどこに注目するだろうか?全体を見てもなんとも判断のつかないときは、その人の一部分を見ればいい。
といっても、ポイントは「顔」「しぐさ」「声」「しゃべり方」と無数にある。
迷わず「顔」に絞る、という人もいるだろうが、私は、「その人のいちばんいいところ」を探し出して、そこに注目するようにしている。
たとえば、「細かい気配りができる」とか、「落ち着いている」とか、「『えー』とか『あー』とか、無駄なことをいわない」とか、人それぞれである。
なぜなら、その人のいいところさえつかめば、これまでの経験上、その人の全体像についてもだいたいはずさないのだ。
とある会社の人事部長も、「就職活動の面接の際には、そういう視点で志望者のことを見ている」と、私と同じようなことをいっていたので、これはオススメの見方である。
これも、要は「木を見て森を推測する」という方法だ。
この会計監査的アプローチ、「とりあえず払っておくよ!」ある友人は、飲み会など大人数で支払いをしなければならない席では、必ずといっていいほど〝支払い役″を買って出ている。
たとえば、10人で飲んで5万円なら、「とりあえず払っておくよ!」と申し出て、お店の人に5万円を払い、あとでひとりあたま5000円ずつ回収する。
つまり「ワリカン」ということで、だれでも一度は経験したことのある役まわりだと思うが、どうして彼がいつもそれをやりたがるのか、はじめ私にはわからなかった。
その後、そのカラクリを知る機会があり非常に驚いたのだが、それはとても巧妙なもので、会計的に見てもよくできたカラクリであった。
ワリカンの支払い役を買って出ることには、実はとても大きなメリットがあったのだ。
なにも、本当の支払い額は4万9000円で、9人から5000円ずつ回収すると自分の支払い額は4000円で済むからお得、といったセコイ目的ではない。
支払い役を買って出ることでリーダーシップを発揮したいというわけでもない。
ズバリ、真の目的はキャッシュ・フローをよくすることにあった。
「ん?なんでワリカンなんかに会計用語のキャッシュ・フローが出てくるんだけ‥」と思われるかもしれないが、その理由はこれからじっくりと説明していきたい。
そう、この事のテーマは「キャッシュ・フロー」なのである。
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